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翼ある人びとーブラームスとクララ・シューマンー(2014 宙組)

 
いやーとってもおもしろかった。いい作品です。
クラシックファン以外の大勢にとっては「音楽室の壁に肖像画が飾ってあったひとたち」名前は馴染み深いけどそれ以上はあまり知らない、、ってところが普通だと思う。
後世に名を残す音楽家が同時代に生き、切磋琢磨し、友情や嫉妬が渦巻いていたという事実はめちゃくちゃ興味深い。ゴシップ的にも面白い。
 
主人公のブラームスくんは、シューマン先生の弟子。
若い頃のブラームス。なかなかいい男です。でも朝夏さんには負けます。
朝夏さんめちゃくちゃ美形。あんなんが薄汚れたマントで現れた日には、絶対パトロンになっちゃう。
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ブラームスシューマンの妻クララに思いを寄せていた、というのは史実らしい。
ちなみにクララはブラームスより14歳年上。クララが保護者っぽい態度をとるはずだ。
クララさんが才能あふれる美貌のピアニストってのも本当のことで、このひとドイツ紙幣にもなってます。掛け値無しのべっぴんさん。
怜美さん、苦労人の人妻を上品に好演。
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シューマンの精神症状は、躁鬱に加えて若い頃に罹患した脳梅毒だったらしい。
緒月さんの、すばらしい演技。大人の包容力と、若さへの嫉妬、相反する感情を複雑に見せてくれる。
本人の肖像をみると真面目そうな人だけどねー梅毒か。。
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リストは超絶技巧派にして、女性達が失神するようなビジュアル系だったらしく。
ピアノは通常、右手側を客席に向けて配置されるが、これもリストが定着させたそう。
高音部のメロディラインをお客さんにアピールするためなんだとか。
そんな、ステージングにもこだわったライブアーティスト。あらほんとに美形ですね。
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楽聖ベートーヴェンは、彼以前と以後で音楽の意味が違ってしまうくらい強烈な才能だった。
ブラームスが生まれる前に亡くなっているから二人の直接の交流はない。
ベートーヴェンの登場の仕方、みうらじゅん氏の「アイデン&ティティ」におけるボブ・ディランを思い出してしまったのは私だけか(ヅカファンとみうらファンは重ならないか?)
凛城きらさんのベートーヴェンのコスプレは見事です。偉い。ほんとにこんな感じ。
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「一流は、超一流に潰される」という言葉を聞いたことがある。
二流三流の人間は、分をわきまえているか、もしくはそもそも正しい自己認識ができていないから、天才を目の当たりにしても素直に賞賛できる。平気でいられる。
でも一流のひとは、超一流との「超えられない壁」を正しく認識してしまう。その上で、そこと戦わずにいられない。
シューマンブラームスベートーヴェンの影にとらわれ、それを超えようともがき苦しんだのは、まさに一流が超一流の技量を見せつけられた苦しみだろう。
才能とは、呪いでもある。
 
最後には黒燕尾の群舞もあって、痺れるほどかっこいい。ああ素敵。
クラシックを改めてちゃんと聴きたくなる、いいお芝居でした。