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宝塚・音楽・映画・時々ジャニーズ

ずっとお城で暮らしてる(シャーリィ・ジャクスン)

言わずとしれたホラーの名作を再読。
夢見る少女メリキャットの一人称で進む物語。
メリキャットは、姉のコニーと体の不自由な叔父の3人で、お屋敷に住んでいる。
両親や他の家族は、数年前の毒殺事件で亡くなった。叔父さんの故障もどうやら毒の後遺症らしい。
容疑者は姉のコニー。嫌疑不十分で釈放されたものの、
その時からコニーはお屋敷に引きこもり、外界に出ない。
でもメリキャットは、優しくてきれいで料理上手なコニー姉さんが大好き。
町で買い物をするメリキャットに対して、町民たちは毒殺屋敷の娘だと白い目を向ける。
(みんな嫌い、死んじゃえばいい)彼女は胸の中で罵る。

読んでいてギョッとするのは、メリキャットの年齢だ。
メルヘンチックでいたずら好きで無邪気で、時に幼い敵意をむき出しにもする彼女、
せいぜい12歳くらいの子供の感じなのだが、実は18歳と結構な大人なのだ。
その辺を合わせると、メリキャットの精神状態が普通でないことがわかってくる。
無邪気さと見えたものは、どうやら狂気だ。
そうなるとコニー姉さんの妹への優しさや世話焼きも急に不気味なものに見えてくる。
この仲のいい美しい姉妹はずっとお城で暮らすのか、、40歳になっても60歳になっても。
メリキャットは無邪気な少女のままで、コニーは優しい姉さんのままで。
ショッキングなシーンがあるわけでもないし地味といえば地味な話なんだけど
想像すると気味悪いような綺麗なような恐ろしいような、
でもちょっと甘美さも感じてしまう世界。やっぱりうすら怖い。

ビジュアルイメージは相当違うけど、かの天才集団アードマンの名作短編「ピアース姉妹」
この小説を思い出しちゃったんだよな。このピアース姉妹も、いつから二人で暮らしてるんだろう。
不気味かわいい、怖いけど泣かせる姉妹