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宝塚・音楽・映画・時々ジャニーズ

マジカル・ガール(2016)

監督:カルロス・ベルムト
出演:ホセ・サクリスタン、バルバラ・レニー、ルイス・ベルメホ、ルシア・ポジャン 他
 
予告編を見るとうっかりハートウォーミングないい話かと思いそうになるが、全然違った。普通に暮らしていた人があっという間に人生転落する、「風が吹けば桶屋が儲かる」の暗黒版。私の大好物のフィルム・ノワールでした。
 
恵比寿ガーデンシネマ。劇中の蜥蜴の絵と、魔法少女のステッキが展示中。
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お話は、難病の愛娘を思うお父さんの愛から始まる転落劇。恐喝が連鎖する。以下ネタバレ。
 
白血病の少女アリシアちゃんは日本オタクでアニメ「魔法少女ユキコ」に夢中。
彼女の夢は、ユキコのコスプレで踊ること。
失業中の父ルイスは、どうしてもユキコのドレスを買ってあげたくて、偶然一夜を共にしたメンヘラ人妻のバルバラを恐喝してお金を巻き上げようとする。
彼女の裕福な暮らしぶりを見て、これくらいの脅しは大丈夫と思っちゃったっぽい。
でもバルバラ精神科医の夫にモラハラ的に管理されていて、自由になるお金はゼロ。
困った彼女はサディストの金持ち相手に売春をしてお金を工面する。
このバルバラさんのヌードが、古傷だらけなんだよね。自傷か、事故か、誰かにやられたのか、説明がないところもノワール
 
バルバラが再びその金持ちのお屋敷を訪ねた時、謎の「黒蜥蜴の間」に入り、半殺しの重傷を負う(ここで乱歩より三島より美輪明宏より、オサさんの美声が脳裏をよぎるわたくし)。
部屋の中で何が行われているのか、描かれないのが怖い。
瀕死のバルバラは自分に魅入られている元恩師の初老男性ダミアンをそそのかし、復讐させる。ダミアンとバルバラの過去もはっきり描かれないところがまた、いいのだ。
 
すごい悪人が出てくるわけではないんだけど、誰も善良じゃない。
この映画、3つのチャプタに分かれているんだけど、バルバラのパートは「悪魔」だもんね(そして彼女に操られる男の名はダミアン・・)。
役割としてはバルバラファム・ファタルだが、考えてみたら、アリシアちゃんもまたファム・ファタルだ。
タバコとお酒を要求し、挙句に馬鹿高いプレゼントを望んで男の人生を狂わせる。
しかしあの愛らしいアリシアちゃんが最後あんなことに・・(涙)
長山洋子アイドルソングが場違いに間抜けで怖い。
暗い話だし、説明がないし、好き嫌いはあるだろうな。私は好きでした。
 
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パンフレットは町山智浩さんの解説もあって、充実してます