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反撥(1965)

 
ずっと見たかったこの作品、TSUTAYAの発掘良品コーナーで発見!TSUTAYAさんありがとう。
作品自体は超有名なので今更ネタバレも何もないと思うけど、以下ネタバレ含みます。
 
美容院で働く内向的なキャロル(カトリーヌ・ドヌーヴ)は姉のヘレンと二人暮らし。
若く美しいがいつもうつろな無表情。彼女には男性恐怖(または男性憎悪)がある。
姉と恋人のいちゃつき合いに強く苛立ち、ボーイフレンドにちょっと触れられるだけでびくっと嫌悪感を表す。
理由は明言されないものの、何度か示される昔の家族写真で、彼女のトラウマが察せられる。
写真に映る少女時代のキャロルは、固い表情で家族と距離を置き、父親らしき男性を警戒するように睨みつけている。
そこでほのめかされるのは、家庭内での性的虐待。映画のはじめから、彼女の精神にはひびが入っている。
 
姉が恋人と旅行に行ってしまった数日の間に、キャロルの心は本格的に壊れていく。
ネグリジェ姿のまま仕事にもいかず荒れた部屋で一人、妄想に蝕まれていくキャロル。
これがとても怖い。
腐った兎料理の皿にたかる蠅。(イレイザーヘッドの元ネタとして有名だが、たしかにあの赤ちゃんや流血チキンと重なる・・)
壁はひび割れ、廊下から不気味な手がのびる。
2人の訪問者、彼女に性的興味を示し強引に近づこうとした男たちの末路。
 
カトリーヌ・ドヌーヴはフランスを代表する大女優で超絶美女だが、性的な歪みや劣等感を抱える役が似合う女優でもある。
彼女自身、夭折した姉フランソワーズ・ドルレアックにコンプレックスを持っていたという。明るく快活で誰からも愛される姉と、その影でひっそりと劣等感を抱く妹。
カトリーヌは10代でロジェ・ヴァディムの子を産み、別れている。当時はヴァディムのことを相当憎悪していたらしい。
何となく作品と重なるところのある女性なのだ。
氷のような美貌。若い頃のドヌーヴは、男を愛さない女の役が妙に似合う。怖くて美しくて素晴らしい作品だ。
 
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壊れゆくドヌーヴ。怖くて可哀想で美しくていたたまれない