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キャロル(2016)にうっとり。今年ベスト級

 
イヤミスの女王パトリシア・ハイスミスによる美しいラブストーリー。
良かったです。好きです。まだ2月だけど今年ベスト級。なんて繊細で切ないんだ。
百合でありつつハッピーエンドというのがいいですね。(百合映画でハッピーエンドはあんまりないんだよな。あ、「バウンド」も良かったなぁ)
古い映画のようなスモーキーな色調で、なんとも美しい作品でした。
 
写真家を目指すテレーズはデパートでアルバイト中に、買い物客の裕福なマダムに一目惚れをする。
この出会いのシーンが素晴らしい。クリスマス商戦の混雑の中、人垣を超えて二人の視線がふっとからむ、一瞬時間が止まる。
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この瞬間、、時間よ止まれ、ってやつですね。
 
テレーズには優しい彼氏もいるが、どんどんキャロルに心が傾いていく。
相手は女性、しかも離婚調停中とはいえ人妻に魅かれる自分に戸惑い、思わず彼氏に尋ねる。
 
「あなたは男性に恋をしたことがある?」
「ないよ。君は女に恋をしてるのか?」
 
彼からの旅行のお誘いは断り続けているのに、キャロルとの旅行には二つ返事でいそいそ支度をするテレーズ。もう答えは出ていますね。
 
キャロルを演じるのは上流階級の女性を演じたら世界一のケイト・ブランシェット
優雅で威厳のある物腰と、声の深みにやられた。取り乱しても上品なんですよね。
キャロルのよく手入れされた金髪と、若いテレーズの無造作なブルネットの対比も綺麗。ルーニー・マーラの子供のような真っ直ぐな瞳も良かった。大きな目に吸い寄せられる。この女優二人が本当に素晴らしくて、黙っていても細やかな心の揺れが伝わってくる。
 
キャロルの親友にして元カノのアビー役に、アメリカン・ホラー・ストーリーのサラ・ポールソン。知的な美女でありつつ、どこか少女っぽい堅さのある顔立ちが役に合っている。
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頼りになる友人、アビー。
 
原作のアビーはやや下品に書かれているのだが(テレーズ目線だから、嫉妬が入っているんだろう)映画版はとても素敵。
サラは私生活でもカミングアウト済み。大女優ホランド・テイラーと付き合ってるよね。いい話だわ。
 
この映画の中の男性たちは「常識と正義がネクタイ締めてる」みたいな存在。
女性たちの静かな世界に威丈高に踏み込み、愛ゆえに彼女たちを裁く。
キャロルの夫の独善的で高圧的な態度に腹が立つが、夫にも言い分があるだけに辛い。
醜い争いは嫌、とキャロルが夫に言う。私たちはもっと美しいはずよ。あの台詞にも泣かされた。
ゲイ差別と女性差別のダブルパンチの中、自分を偽らない人生を選んだキャロル。
キャロルとテレーズ、この二人が幸せになってほしいと心から願いました。映画なのに。