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べるばらは女の受難の見本市

先日宙組公演をみて、つい原作を読み返してしまった。

muremoira.hatenablog.com


ベルばらは、実は陰惨な怖い話だ。主要キャストのほとんどが死ぬ。
あんなに華やかな大作漫画のラストカットは、フェルゼン伯爵の惨殺死体だ。

時代が時代なので、軍人の戦死と貴族のギロチン刑は避けられないが、それだけではない。いろんな形の普遍的な苦難、特に「女の受難」が描かれる。
もう不幸の乱れ咲きというか、大貴族も貧民も関係なくみんなどえらい苦労をする。
有閑マダム(極北はアントワネット)だろうが、キャリアウーマン(代表はオスカルね)だろうが、とにかく過酷な目に合う女達。
でもこれが少女たちの現実なんだなと思うと、泣けてくる。女の子が大人になるのはほんと大変だ。

  • オスカル:軍隊という究極の男社会で孤軍奮闘。身分を捨て人民とともに戦うもアンドレに先立たれた上、自身も殉職
  • アントワネット:少女時代に政略結婚。時代に翻弄された挙句、夫もろとも最後はギロチンで公開処刑
  • ロザリーの母:貧乏の中必死に働いて子供を育てるが、馬車にひかれて轢死
  • ジャンヌ:野心と美貌でのし上がるも犯罪者となり、最後は軍隊に追いつめられて焼死
  • アランの妹ディアンヌ:婚約者が金持ち娘に乗り換えてしまい、裏切られた絶望で縊死
  • ポリニャック伯爵夫人の娘シャルロット:母親から政略結婚を強いられたことを苦に飛び降り自殺
  • ベルナールの母:無理矢理貴族の愛人にされていたが、飽きられて放り出され、入水自殺
  • マロン・グラッセ老衰ではあるものの、可愛い孫アンドレと最愛のお嬢様オスカルに先立たれるという逆縁の苦しみを味わう


唯一の希望は幸せな結婚をしたロザリーだが、彼女だって実母に捨てられ、養母には先立たれ、12歳で売春を試みるという過酷な生育歴。
この漫画の中の、誰になりたいか?と問われたら、どれも勘弁してほしい。
それにしても名作だ。あと成人後のアンドレのセクシーさは異常。