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ノア(2014)

 
(有名なお話だからネタバレもへったくれもないと思うが、一応ネタバレ含みます)
聖書には、自分に神学的な知識がなさすぎてよくわからない部分も多いのだが、中でも不可解なのが、ノアの泥酔事件。創世記9章20-27のくだりですね。
 
大洪水後、ノアはぶどう畑の農夫となる。
ある時、ノアはぶどう酒で酔っぱらい、素っ裸で寝ていた。
ノアの息子のひとり、ハムはそれを見て、他の2兄弟に告げにいった。
2兄弟はハムと違い、お父さんの醜態を見ないように顔を背けながら、着物をかけてあげた。
そして、目が覚めたノアは、なぜかハムに激怒、呪いの言葉を投げつける。
 
・・・何これ?
「みっともないところを家族に見つかり照れ隠しで逆切れしているお父さん」みたいにも見えるが(後に、古語でいう「見る」は性交の意味もあり、ハムくんは酔いつぶれた実父を強姦したという説もあることを知ってさらに唖然としたが)、それにしてもよくわからない挿話ではないか。
 
映画のノアさんは神に選ばれし人なわけだが、別に善人だからではなく、任務を全うできると見込まれたからこそ選ばれた、特命係のモーレツ社員みたいなもの。
信念はたやすく狂気に変わる。
ラッセル・クロウは、「レ・ミゼラブル」もそうだったが、思い込みの激しい男の厄介さを演じると上手すぎて怖い。
身近にいると実に迷惑なタイプだ。おまけにあの熊みたいな屈強な体格。
面倒くさいし逆らって怒らせると怖いし、家族はたまったもんじゃないだろう。
 
ざっくりまとめると
「仕事人間すぎて家族に愛想をつかされ、定年後ひとり寂しく酒ばかり呑んでいるお父さんが、息子の嫁に諭されて家族のもとに帰る」
、、というお話なのだが。
職務に忠実なあまり倫理観も踏み越えて盲進してしまう例は世間にもままあることで、そんな危うさについてのお話に見えてしまった。
 
そういえば例の泥酔事件も描写されていたが、息子が自ら自分の人生を切り開いていくきっかけとして書かれていた。結局原典の謎は謎のままだ・・・