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人生スイッチ(2015)

名匠ペトロ・アルモドバル製作、ダミアン・ジフロン監督の話題作。
コメディとはいえ、結構残酷だしバンバン人が死ぬので、好みが分かれると思う。
無駄のないカットで、全部よくできたショートストーリーだった。
テーマは「怒り」些細なきっかけで人生転がり落ちる、6つの物語。
コメディタッチだけど、私の大好物なノワールの香り。
以下ネタバレ少しあり。
 

1 おかえし

映画のつかみとしてはバッチリ。逆オリエント急行
異常にテンポがよくて、ラストのキレのよさが、酷いんだけどひどすぎて笑う。
運輸交通に携わるみなさんのメンタルヘルスは国を挙げて取り組みましょうよほんと怖いから。
 

2 おもてなし

一見人畜無害そうなおばさんが実はマッド、という設定は好きだ。
いかにも腹黒そうなイヤなおっさんに毒が全然効かないのもなんか笑う。
確実に言えるのは、台所にいる人間を怒らせちゃいかんということだ。命握られてるからね。
 

3 エンスト

些細な、本当に些細なドライバー同士のトラブルから始まるまさかの地獄行き。
私はこれが一番イヤな話だった。何がイヤって登場人物が二人とも感情的なうえ、ネチネチしつこい。人の属性で一番苦手なのはしつこさだな。あ、作品としては出来がよくて面白かった。
ラストの警官の一言「痴情のもつれかな」に笑う。
 

4 ヒーローになるために

これも指折の「怒らせちゃいけない職業」の人、爆破のプロ・解体職人が怒る怒る。
でもさすがプロ、怒りのブレーキが壊れてるようでいてギリギリのルールは守る。
「手に職」が人を救うという、いい話だなー
しかしあの展開で「パパすてき」ってなる家族もおかしいぞ。でもいい話だなー
 

5 愚息

よくある筋書きなんだけど、役者さんがみんな上手くて、凄く引き込まれた作品。
メソメソ泣いてる息子に、エゴ丸出しのお母さん。
動転している父親からえげつない商売人の顔に変容するお父さん。
弁護士も庭師のおじさんも銭ゲバぶりがうまい。しかしアルゼンチン警察ってあんな汚職まみれなの?
 

6 HAPPY WEDDING

ベタな披露宴の風景が日本とそっくり。あれでおばちゃんたちが留袖なら、日本の地方と変わりない。
普通の夫婦が10数年かけるところを、披露宴のたった数時間で濃縮して見せてくれる新婚夫婦。
これは結婚の寓話、おとぎ話だよな。ラストの、新郎の腹を括った顔がなかなか感動的。「血をみるような喧嘩の後、激しいセックスで仲直り」ラテンだねぇ。