マルホランド・ドライブ(2001)とLAの泣き女
(以下ネタバレ含みます)
前回の続き。
タイトルが示すとおり「マルホランド・ドライブ」はハリウッドの夢だ。
あまたの若者たちがスターを夢見てこの地を訪れる。
栄光を掴むのは、ほんの一握り。その多くは、夢半ばで挫折していき、
その中には、地獄のような人生の転落劇に陥る者もいるだろう。
ベティ=ダイアンのグッド・ドリームとバッド・ドリーム。
前半夢、後半現実というのが一般的解釈だけど、後半の悲劇もまた、現実ではなくハリウッドの悪夢なのかもしれない。
だって、これ映画のお話だもの。
この上なく悲しくせつない話なのに、何度も味わいたくなる。
そして、なぜか心が浄化されるような、救われたような気になる。
私たちの人生は美しく残酷で、どこに落とし穴が待っているかわからない。愛はいつか冷める。仕事など一寸先は闇だ。
そんなとき、私たちの身代わりに、悪夢を引き受けてくれる映画の中の俳優たち。
ダイアンのために歌う泣き女(「ジョランド」これが絶品中の絶品)、客席のベティとリタが身を寄せ合って泣く。その姿は映画を見ている自分と重なる。
(そういやリンチ監督って、ステージやTVを見て泣く観客の描写が多いんだよな)
シレンシオ。お静かに。
この映画は「サンセット大通り」「軽蔑」をはじめ、いろんな名作へのオマージュに溢れている。
知らなくても楽しいけど、知っているとよりぐっとくる。
これは映画と映画を愛する者たちへ捧げたレクイエムだ。
主演のおふたり。なんておきれい