アメリカン・パイ(2003 雪組)
グランパ:貴城けい リュー:山科愛
短編ながら、初めて読んだとき泣いて泣いて吐きそうになるくらい泣いた。
「時がすぎてすべてが消えても、思いだけは残る」
いまだに読み返すたびに泣く。今までの人生で生き別れ、死に別れてきた愛する人たちのことを思い泣く。
おとぎ話のよう、でも誰もが経験する喪失と魂の救済を描ききった名作中の名作。これをタカラヅカがミュージカル化。泣くでしょそりゃ。泣きましたとも。
貴城けいさん、何度も本気で涙を流しながらの熱演。(あれだけ泣きながらちゃんと歌えるなんて凄い。プロですね)
グランパのイメージからするとちょっと線が細すぎ綺麗すぎるけど、売れないロックミュージシャンのださかっこいい感じが素敵で、小柄な山科さんとの身長差にも萌え。
ところで。
バンドや音楽を題材にしたお芝居や映画って難しいと思う。歌姫を題材にするなら、説得力のある歌姫役をちゃんと出さなきゃいけないから。
リューはやせっぽっちの、何を考えているかわからない無口な家出少女。ところがいったんマイクに向かうと堰を切ったように歌いだし、そのきれいな歌声と心にしみる詩が、客席の心を一瞬で掴む。
これを逃げずに映像でちゃんと表現するのは難しい。(あなたは知っていますか。天才歌手という設定の主役に一度も歌わせなかった迷作映画「BECK」を)
しかしそこはタカラヅカマジックで、違和感なく再現。
そういや、リューがブラッドベリの本を読むシーンは、素晴らしいSF作家でもある萩尾先生リスペクトだろう。
もう号泣ですよ。