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激情 ーホセとカルメンー(2007 星組)

ドン・ホセ:柚希礼音 カルメン:夢咲ねね メリメ/ガルシア:涼紫央 エスカミリオ:夢乃聖夏 他
 
柚希ナポレオンを見てぐっときてしまい、お土産に買って帰った「激情」のDVD。
宙組の初演が神懸かり的に素晴らしかった作品だ。
 
花總まりさんのカルメンは美しく情熱的で、蓮っ葉にふるまっても上品さを失わなかった。姿月あさとさんのホセもまた、朴訥で不器用な男の純情を見事に演じて、
カルメンに取りすがってかき口説く様は何度見ても泣かされてしまう。
 
柚希さんは男っぽく純粋で、どこか「誠実な不器用さ」を感じさせる人だ。
(実際はあんなに何でもこなせるスターなのに!)
そんなちえさん、まさに「激情」にかられて落ちていく愚直なホセ役が似合わないわけがない。
ヅカのトップスターは女に惚れられるスマートな二枚目役が基本形だろうが、柚希さんは、女に翻弄され、人生を狂わされる役が妙に似合う。
この人の場合、服を脱ぐとさらに男っぽくなるので濃厚なラブシーンや格闘シーンで
ばっと上着を脱ぐとハッとするくらいセクシー。
スペインの青い軍服も、ジプシーの仲間になって後のブラウン系の無造作な衣装も
もう何なのどういうつもり?というくらい似合っている。
 
また夢咲ねねさんは上背もあり肉感的で、土の匂いのするカルメンを熱演。
これくらい肉体の存在感がバーンとある娘役トップ、いいじゃないか。肉体派女優だよな。
メリメの原作を読んだとき、なんでカルメンが悪女呼ばわりされるのかさっぱりわからなかった。もの凄くまともで地に足のついた女としか思えなかった。
自由な魂だの気高さだのという高尚な言葉よりもむしろ、命そのもののような無頓着な野性。
だって男に亭主ヅラされるとやっぱり腹立つもんね。わかるわカルメンちゃん。
魔性の女というより、肝の据わった強い女。
ねね様はコケティッシュな可愛い顔の奥に、ものごっつい逞しさを感じさせる役者なのでカルメン役は似合っていると思う。美しさだけでは駄目だ。
図太いくらいの強さと傷つくことを知っている優しさがなければ。
 
また、夢乃さんの伊達男ぶりもよかった。
この人、個人的に現存するタカラジェンヌの中で一番スタイルいいんじゃないかと密かに思っている。足が長くて胴体に厚みがあり、素晴らしい舞台姿だ。今後のますますの活躍を祈る。
 
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初演は銃だけど、再演では刺殺。このシーンは何度見ても泣ける