シネマと宝塚と音楽と

宝塚・音楽・映画・時々ジャニーズ

ラスト・タイクーン/TAKARAZUKA夢眩(2014 花組)①

東京は記録的な積雪、そのうえ私の足である東横線脱線事故で運休という悪条件の中、早朝から雪まみれになって行ってきました宝塚遠征。
万難を排しても行きたいのは、蘭寿様、ただあなたがいるからです。
 
ラスト•タイクーンフィッツジェラルドの未完の長編小説。これ、70年代に映画化されてんだね(ちなみにキャストがデ•ニーロ、ジャック•ニコルソン、ジャンヌ•モローと、やたら豪華)。
ヅカと相性のいいフィッツジェラルド作品。過去の幻影や青春の夢に足をとられて、現実を見失っていく男の悲劇が多い。
その夢は、往々にして女に投影される。グレート・ギャツビーのデイジー、冬の夢のジュディ、そしてモンロー•スターが作り上げた夢の女ミナ•デービスと、その身代わりのようなキャサリン
ミナはモンローのガラテアだった。一方的に思い入れられたミナにせよ、キャサリンにせよ、この先結婚生活が続いたとして果たして幸せだったんだろうか?
あんまりそうは思えない。愛の物語だが、フィッツジェラルドには愛の不毛が感じられてならない。そこがいいんだけど。
 
二回見たが、二回目のほうが面白かった。
ショービジネスに人生をかける人々の話は、自然に宝塚歌劇そのものと重なる。
「現実を見たけりゃ出て行け、俺たちは夢を作ってるんだ」
まんま、宝塚のことじゃん。
そして、そんな作り物の夢でしか語れない真実が、確かにあるんだ。
このステージは、男役蘭寿とむの、弔いでもある。
最後、真っ白なスーツで人生を振り返るモンローのひとり語りには、思わず涙してしまった。広い舞台にたった一人、切々と訴える台詞は胸に迫る。素晴らしいシーンだ。
そして蘭寿様のかっこいいこと。時代はハリウッド黄金期、男性のスーツ姿が実に決まってる。
ドライブシーンなど、もうあり得ないレベルのかっこよさに悶絶する。
また、明日海りおさんのギラギラ親父役もなかなかいい。このひと、可愛い少年系かと思いきや、不思議に癖のある役が似合う。不満を抱えて鬱屈した男を演じると絶品だ。
横顔がきれいで、フェアリー男役の中で私が一番好きな朝海ひかるさんに少し似ている。(名前の字面も似てるけど)
明日海さんで、とびっきりの色悪みたいな役を見てみたい。
 
こういう苦い話は、嫌いじゃない。
蘭寿様の大人の魅力が存分に堪能できる。ラストは虚実の皮膜に泣きますよマジで。
イメージ 1
キャトルレーヴが蘭寿様一色。