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ニジンスキー ~奇跡の舞神~(2011 雪組)

ニジンスキー早霧せいな、ディアギレフ:緒月遠麻、ロモラ:愛加あゆ 他
 
ニジンスキーといえば山岸凉子先生の名作バレエ漫画「牧神の午後」でその半生を知った。
天才舞踏家にして、精神が繊細すぎてまともな社会生活が困難な人だったらしく。
芸術家としての翼をもつ彼には、俗世間を生き抜くための腕がない。
また、恋愛というものがわからない男だったそうで、男女の情熱的なシーンに情感を込めるのがひどく苦手だった。
そのかわり、ソリストとしてはまさに神。「薔薇の精」のような、人間でない役やらせると絶品。
プロデューサー、セルゲイ・ディアギレフのお稚児さんだったことは有名だがニジンスキー本人はゲイだったんだろうか?どうもエピソードを見るにつけ、無性愛者っぽいんだよなこの人。
 
そして宝塚版のニジンスキー
まず特筆すべきは、早霧せいなさんの美しいこと!冒頭のソロダンスから、あまりの美しさに息をのむ。
踊りの技量でいえば、一流のバレエダンサーには劣るし、現役ジェンヌでいうなら、柚希礼音さんにはかなわないだろう。(本気でニジンスキーのダンスやるなら、今ならどう考えても柚希さんだ。ニジンスキーといえば人間離れした跳躍だけど、ちえさんなら表現できるだろう
ただ、ニジンスキーの暗い運命を早霧さんの儚い美しさでうまく体現していたと思う。
狂気に落ち込む姿も綺麗なだけに怖い。
インタビュー読むと、ぱっつんぱっつんに元気な中学生男子みたいな人なのに。いい役者さんだわ。
 
また、愛ゆえにニジンスキーを地上に縛り付ける二人。ディアギレフの緒月さんとロモラの愛加さん。愛加さんの温かくてちょっと鈍感な母性も素晴らしい。
緒月さんは「翼ある人びと」のシューマン役もそうだったが嫉妬に狂う屈折した中年男役が実に上手い。
また、ニジンスキーにダメ出しするプリマ役の五峰亜季さん!なんという貫禄。いやかっこよかった。
 
「牧神の午後」といえば、マスターベーションの露骨な描写で物議をかもした問題作。
しかしそのシーンを省いちゃうとドラマのキモがわからなくなるわけで、そこをどう処理するんだ?と思ってたら、けっこうちゃんとやってましたね。偉い。
あと、ホルスタイン柄の全身タイツってのもスミレコード的にまずいだろうが、そこは、ふんわりときれいな衣装にすり替わっていた。
 
最終的には統合失調症で自分を失い、踊れなくなってしまったニジンスキー
そういえば、未亡人のロモラは、来日したときに宝塚を観劇し、当時の男役スター明石照子さんに熱を上げたらしい(若い頃のニジンスキーに似てるんだってさ)
ロモラさんにこの舞台を見ていただいたら、何と仰ったんだろう。
 
バレエだとこう。人間じゃない感じの動きが気持ち悪くもとてつもなく美しい。