ドン・ジュアン(2016 雪組)だいもん様の罪と罰
宝塚との相性の良さが定着しつつあるフレンチ・ミュージカル。なかなか攻めた内容で驚いた。
何かと癖の強い役が多い望海風斗様が、また物凄い舞台を見せてくれた。だいもん様の白い貴公子も見てみたいけど、黒い役似合うんだよなあ。
「愛に、呪われた男」女たらしのドン・ジュアン。
それも、チギ様ルパンみたいに愛嬌溢れるスケコマシではなくて、人も殺せば、女をゴミ屑の様に捨てる、その上友達甲斐のかけらもない、なかなか潔いクズ男。
女たちは彼を恨みながら、離れられない(よっぽどいい男なんでしょうねぇ)。
さらに憎たらしいことに、腕っぷしも強いときている。
キリスト教的なモラルが底にあるお話。
元修道女の正妻エルヴィラ(有沙瞳さん)は夫に去られて娼婦になった。
彼女のセリフには「マグダラのマリア」に触れた一節がある。
そしてドン・ジュアンが初めて愛する女性の名はマリア(彩みちるさん)。
彼女の腰に幸せそうに顔を埋めて眠る姿は、お母さんに甘える子供のようなのだ。
さらに、ドン・ジュアンの過去が、回想劇の中で示唆される。
なぜ彼は、愛を求めつつ愛を拒絶する生き方しかできない人間になってしまったのか。
ここが一番衝撃的だった。
ドン・ジュアンは少年の頃、美しく優しい実母を犯した。母は屋敷から身を投げて自殺した。
「愛の呪い」は、これだったんですね。
ドン・ジュアンが殺めた騎士団長の亡霊が「愛ゆえに死ぬ」という呪いをかけるずっと以前に、愛とは何か、何が罪かも理解できないうちに、愛し愛されることから追放されてしまった。
その後、知ってか知らずか、ずっと自分で自分を罰している(ように見える)。これは切ない。
マリアちゃんのくだりがわりとどうでもよくなるくらい重く、強烈なエピソードだ。DVDが出たら見直してみようと思う。
演者の皆さんも素晴らしい。
美穂圭子様と舞咲りん様とだいもん様、なんと贅沢な布陣の歌声。美穂様が演じる女の業の迫力と言ったら!
有沙瞳さんの歌もよかったなぁ。娘役の見せ場が多くて嬉しい。
英真なおき様の重厚な芝居。父親の愛と保身、貴族の鷹揚さと身勝手さ。重層的な顔を見せてくれる。
ロマの美女役、煌羽レオさん。踊り子衣装で披露した6パックに割れた見事な腹筋をガン見。
いうまでもなく、だいもん様の芝居には引き込まれた。時々拍手するのを忘れるくらい、ドン・ジュアンという狂った男に魅了されました。だいもんジュアン様にならコマされても本望よ。
そして、香綾しずるさんの亡霊がすごい。
骨格だけ強調されると、ガオリさんってなんとなく天寿光希さんと似てると思う。しかし役名「亡霊」て。
この上さらに、血糊がついてたですよ
カーテンコールではだいもん様「今日は父の日・・(じゅんこさんをチラ見)いつもありがとう♡」を受けてじゅんこさんが無言で指でハートマークを返す麗しい父子愛もありました。